ダンス部だったとき
学生時代、全生活をダンスに捧げていた時期がある。私のやっていたダンスはボールルームダンスと民族舞踊で、ほとんどがカップルダンスだった。
今思うとなにがそんなに楽しかったのだろう、と、前世の記憶のようであるが、あのころは本気でダンスに打ち込んでいて、毎日がキラキラしていた。私の得意だったのはアゼルバイジャンの民族舞踊だったのだが、クラブ内ではアゼルバイジャンよりブルガリアのほうが人気があったのであまり曲がかかることはなかった。
他大学ともよく踊った。
社会人サークルにも通った。
ルーマニアで何年も暮らしている日本人夫妻から直接現地の踊りを習ったりもした。
すべて前世の記憶のように遠い。
あの頃、わたしは180度開脚して後ろに足を抜くことができた。今はかがんでものを拾うことすら億劫だ。
なんて遠くに来てしまったんだろう。
とはいえ、当時に戻りたいかといえばぜんぜん戻りたいとは思わない。今が一番幸せだから。
そう。今が一番、幸せなのだよ。